【長崎被曝体験者】内部被曝の影響を認められなくなった国

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【長崎被曝体験者】内部被曝の影響を認められなくなった国6月24日に書いたこの記事 【長崎原爆】「私の体が内部被ばくを証明している」この判決は福島事故の未来を占う! の後日談です。

長崎地裁・井田宏裁判長は「合理的根拠を欠く」として、原告全員の訴えを退けました。内部被ばくの影響は認められないと高らかに宣言したのです。

長崎被爆体験者が敗訴 地裁判決 健康手帳交付認めず


東京新聞 2012年6月26日 朝刊

長崎被爆体験者訴訟で請求が退けられ、抗議の行進をする原告団ら=25日午後、長崎市で:2012年6月26日東京新聞より引用

爆心地から十二キロ以内で長崎原爆に遭ったが、国が定めた被爆地域外にいたため被爆者と認められていない「被爆体験者」三百九十五人が、国や長崎県などに被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の第一陣の判決で、長崎地裁(井田宏裁判長)は二十五日、請求を全て退けた。

判決は、原告が主張していた原爆直後の急性症状について「放射線による症状と合致していない」と指摘し、被爆者と認定するよう求めた請求を棄却。体験者がいた地域を被爆地域と認めることや、健康手帳を交付するよう求めた請求も「不適法だ」として却下した。原告側は控訴する方針。

訴訟では、被爆者援護法が被爆者の分類の一つとして定める「投下時やその後に放射能の影響を受ける事情の下にあった者」に原告が該当するかが争点となったが、井田裁判長は「放射線の影響を指摘した原告側の専門家の意見は、合理的根拠を欠く」として退けた。

原告の急性症状の訴えについては「健康手帳が交付されるかもしれないという意識がある以上、記憶の混乱や変容が生じる恐れが低いとは言えない」とも述べた。

さらに、一九九五年の援護法施行時の「爆心地から五キロ以内にいた人に放射線の影響があった」とする科学的知見は、現在も有効だとも指摘した。

原告側は「爆心地から最大十二キロ以上離れた場所の一部が被爆地域となっているのは、半径十二キロに影響があると認めた証拠だ」と主張したが、井田裁判長は「当時の長崎市の行政区域を適用したためで、科学的知見が根拠ではない」と退けた。

原告は九十七~六十七歳の男女で、ほかに体験者計百六十四人も同様の訴えを長崎地裁に起こし係争中。

国は、被爆地域を南北に長い形で指定。被爆体験者は、その外側で原爆に遭った人たちで、医療費の支給は被爆体験による精神疾患とその合併症に限られるなど、被爆者と援護内容に差がある。


非常に不当な判決


原告弁護団の龍田紘一朗弁護士の話 非常に不当な判決だ。放射線について根本的なことが分かっていない。原子雲に放射性物質が閉じ込められていることに触れつつも、それが放射性降下物となって環境を汚染した事実を全く見ていない。原爆投下直後の急性症状も、放射線に特異な症状でなく、いろんな原因が考えられると行政の言い逃れを丸のみしている。原告へのアンケート結果も、うそをついていると言わんばかりだ。

国 主張認められた


厚生労働省原子爆弾被爆者援護対策室の話 国、長崎県、長崎市の主張がおおむね認められたと認識している。今後も関係自治体と協力しつつ、被爆者援護行政がしっかりと行われるよう努めていく。

科学根拠証明困難


日赤長崎原爆病院の朝長万左男(ともなが・まさお)院長(被爆者医療)の話 ほとんどの争点が門前払いで全面的な原告敗訴だ。黒い雨を浴びて髪が抜けた人などが一部いるため、全く放射線の影響がないとは言えないはずだが、判決では科学的根拠がないことが敗訴につながっている。根拠を新たに証明するのは困難。医療費補助の範囲の狭さが体験者の不満に結び付いており、補助対象の精神疾患の拡大解釈を国に要望するよう運動を転換した方がいい。

果たして、この裁判にどんな意味があるのか?

放射線による人体への影響は当時はまったく分かっていなかった。しかし今は違います。広島・長崎の原爆投下を皮切りに数々の核実験や原発の放射能漏出事故、そして様々な研究結果の積み上げにより、放射性物質による内部被ばくの影響は徐々に解明されてきています。しかしそうした現代の知見とは別の力がこの裁判結果には働いているように思えてなりません。

原爆被害者による内部被ばくの集団訴訟は2003年から行われています。

被爆者の集団訴訟と内部被曝問題への国民の認識広がる


2003年から7年間、内部被曝の有害性をめぐって306名の被爆者が政府を相手に集団訴訟で争い、全国28の地方裁判所で被爆者が勝利し、大新聞が連日、内部被曝の文字を紙面で報道したため、国民の間に原爆放射線被害、特に内部被曝の存在が認識されるようになった。しかし、日本政府はまだ低線量内部被害が有害で危険なことを認めようとせず、従来の被爆者対策に誤りはなかったと開き直っている。これは軍事機密を口実したアメリカの核政策からの陰の圧力ではないかと推定されている。

内部被曝からいのちを守る  ACSIR 市民と科学者の内部被曝問題研究会編
肥田俊太郎 巻頭のことば より引用


つまり福島事故が起きる前までは、内部被曝による健康影響が裁判で認められてきたのに、2011年3月11日を境にこの「内部被曝」を認める事はできなくなってしまったのです。

なぜか?


政府やその関係者は福島第一原発由来の放射性物質は危なくない、大したことない、と言ってきました。食べて応援、国際基準と照らしても日本の食品は十分厳しいから心配するな、余計な食品の検査をするなと、今もその態度は変えていません。

本来、環境中にあってはならない量の放射性物質が、それこそ子供の生活する環境にいまだ除染もされずに放置されているのに、勝手な除染基準を儲けてその基準に達しなければなかったものとしてしまっています。

それは福島由来の放射性物質が危ないもの、健康に影響を及ぼすものと認めてしまったら、払えない額の補償をかかえることになるかもしれないからではないでしょうか?ほんとうに福島原発から巻き散らかされた放射性物質が危なくないのなら、この判決も先きの28例と同じく認められてよかったのではないでしょうか?そんな穿った見方をしてしまいます。

日本は過去に様々な公害訴訟がありましたが、どの事例を振り返っても政府や加害企業はその責任をなかなか認めようとしません。ましてや今回のような低線量による内部被ばくは前例も少なく、晩発性のため、他の原因因子との切り分けが難しいことをいい事に、絶対に認めようとしないということが予想されます。まさしく今回の裁判がその未来を映し出しているように思えます。

なんとも暗澹たる気持ちになりますが、最後に前出の肥田先生の言葉を引用しておきます。

被爆者運動のなかには何十万という被爆者が、何十年もの年月をかけて放射線に負けずに長生きするために努力した経験の蓄積がある。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は組織内の相談活動を通じて、長生きに必要な生き方を30年間毎月1冊ずつ、計26冊のパンフレットを発行し、その中で人間の誰もが行なう行為、①睡眠、②食事、③排泄、④労働(肉体と精神)、⑤休養と遊び。⑥セックスの6つを、それぞれ、生理的に定められた枠内で正しく行なって生きることをみんなで学び、励ましあって実行してきた。今年の3月で90歳以上を含む21万人強の被爆者が生き残っているのは、そうした自主的な運動の成果だったと思っている。この経験を、この本の読者や悩んでいるお母さんたちに届ける方法を相談したいと思っている。

基本は、大人について言えば、襲いかかる放射線とは、自分が自分の命の主人になって闘って生きること。子どもは、両親が模範的な自分たちの生活の仕方を見せ、体と心の発育については厳しくしつけることしかない。だたし、子どもについては今の実情のなかでは、少なくとも福島県の小学生と中学生は、原発の放射線放出が確実に止まるまでは政府の施策で強制疎開すべきだと私は考えている。受け入れる地方の県、市町村はかなりあると聞いている。


なお、この裁判は原告が控訴状を提出しました。

被爆体験者集団訴訟:「控訴審全力で闘う」 原告団が集会 /長崎
毎日新聞 2012年07月03日 地方版

長崎原爆の被爆体験者訴訟で福岡高裁に控訴した第1陣原告団は2日、控訴状を提出した長崎地裁前で集会を開き、約130人が参加した。被爆体験者を「被爆者」と認めなかった長崎地裁判決について、原告は「被爆地・長崎の裁判史上、大きな汚点だ」と批判し、控訴審を全力で闘うことを誓った。【樋口岳大、釣田祐喜】

豪雨の中、末期がんの治療を続ける原告団長の小川博文さん(69)=長崎市=がマイクを握り「原子爆弾のことをよく分かっていない裁判官が出した不当判決。裁判官は原爆のこと、内部被ばくのことをもっと勉強すべきだ。高裁では必ず勝つ」と声を張り上げた。

また、判決が「原爆投下から50年以上経過している」などとして、原告の証言の信用性が低いと判断したことについて、原告の上戸大典さん(70)=同=は「証言はその人にとってかけがえのない真実。私たちは見たもの、感じたものをありのまま述べてきた」と反論。「地裁は、私たちの証言や病歴、家族のことなどを検討したかけらもない」と批判した。原告団事務局長の岩永千代子さん(76)=同=は「私たちの真実を聞いてくれる判事も必ずいる。団結して頑張ろう」と呼びかけた。


▼この記事の元となった記事です。
【長崎原爆】「私の体が内部被ばくを証明している」この判決は福島事故の未来を占う!

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